第66回 知の拠点セミナー
第66回 知の拠点セミナー
講演1 「宇宙一重い物質を探る」 / 講演2 「試験管の中で腎臓を創る」
日時 | 平成29年9月15日(金) 18時00分~20時00分(※17時30分から受付開始) |
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場所 | 京都大学東京オフィス (東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸の内ビルディング10階:アクセスマップ) |
プログラム |
講演1:「宇宙一重い物質を探る」
民井 淳(大阪大学核物理研究センター 准教授)
宇宙にある観測可能な物質の重さの99.9%は、陽子と中性子からなる物質「原子核物質」からできています。人間の体も例外ではなく、あなたの体重の99.9%は原子核物質です。一方で原子核物質は宇宙で観測されている最も重い物質、より正確には最も密度が大き い物質でもあります。超新星爆発の後に残る中性子でできた天体「中性子星」はこの原子核物質からできています。角砂糖1つ分の重さがざっと3億トンです。
この原子核物質の性質を調べる実験を、大阪大学核物理研究センターの加速器施設を使って行っています。極微の世界にある原子核物質の性質を調べることは、宇宙誕生時に元素がどうできたか、恒星は内部でどの様な反応を起こしながら進化していくか、中性子星 はどんな大きさを持つかといった、極大の世界を知る方法でもあります。
今回のセミナーでは、宇宙のスケール・原子核のスケールについてお話したのち、加速器を用いてどの様にして極微の世界を調べるのか、宇宙についてどんなことが分かってきたのかを分かりやすく紹介する予定です。
講演2:「試験管の中で腎臓を創る」
西中村 隆一(熊本大学発生医学研究所 所長)
腎不全による人工透析患者数は増加する一方で32万人となり、その医療費は年間1.5兆円を越えています。にもかかわらず腎不全の 根治的治療は存在せず、腎移植のドナーも不足しています。腎臓のような3次元臓器を作ることは極めて困難とされてきましたが、私たちは 腎臓が形成される過程を忠実に再現することで、マウスES細胞及びヒトiPS細胞から試験管内で3次元の腎臓組織を誘導することに成功しました。 これによって世界的に腎臓再生研究が活発化しています。しかし現在誘導できる腎臓組織は数ミリと小さく未熟で、尿を作ることができません。 今回の講演では、私達の20年間の歩みに基づいた成果と世界の研究情勢・今後の課題を、エピソードを含めてわかりやすく紹介します。