第68回 知の拠点セミナー
第68回 知の拠点セミナー
講演1 「分子デバイスへの応用を目指した新物質開発の最前線」 / 講演2 「国を超えて災害を共有する--インド洋大津波後の世界」
日時 | 平成29年11月17日(金) 18時00分~20時00分(※17時30分から受付開始) |
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場所 | 京都大学東京オフィス (東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸の内ビルディング10階:アクセスマップ) |
プログラム |
講演1:「分子デバイスへの応用を目指した新物質開発の最前線」
佐藤 治(九州大学先導物質化学研究所 教授)
私たちの身の回りではプラスチック材料をはじめ多くの有機材料が利用されています。最近では、分子デバイスへの応用を目指して優れた光・電子・磁気機能を有する様々な分子性機能材料の開発が盛んに行なわれています。近年急激に普及したスマートフォンでは光機能材料の一つである有機EL材料がディスプレイとして利用されています。また導電性プラスチック材料はタッチパネルとして用いられています。この他にも、エレクトロクス、エネルギー・環境、生体・医療応用などを目指して様々な新物質の開発が行われています。
本セミナーでは、特に、私たちの研究室で行っている光などの外場により磁性や分極特性を自在に制御できる新物質の開発とこれらの関連分野における分子性機能材料開発研究の最前線を紹介します。
講演2:「国を超えて災害を共有する--インド洋大津波後の世界」
西 芳実(京都大学東南アジア地域研究研究所 准教授)
今日の私たちはグローバル時代の災害対応という課題に直面しています。日本を含むアジア諸国は、地震・津波、台風・サイクロン、洪水・地崩れといった、自然災害の多発地域ですが、アジア各国の経済成長と都市化が進み、災害の影響が国境を越えて多くの国に及ぶようになっています。 また、被災地の住民の国際化や高齢化といった新たな課題も生じており、従来のように、各国内での国民を対象とする防災教育だけでは、災害に十分に対応できなくなっています。災害への対応においても、国や地域を越えた越境的な取り組みが求められています。
2004年インド洋大津波は、そのような時代を象徴するできごとでした。インド洋沿岸の十数か国が被災し、欧米人や日本人を含む死者・行方不明者は約22万人という未曽有の惨事となりました。救援・復興活動は「史上最大の支援作戦」と呼ばれ、各国政府や国際機関の連携のもとで進められました。そこでは、防災分野における国際連携の重要性とともに、国ごとに異なる防災・減災実践の経験をいかにして共有するかという課題も明らかになりました。
今回の講演では、2004年インド洋大津波以降に取り組まれている日本と東南アジアと防災分野における国際協力・国際共同研究について紹介します。最大の被災国となったインドネシアでの研究の成果を中心に、各国の文化・歴史・社会の事情を踏まえて個々の防災実践を他地域に理解と実践が可能な形で翻訳・共有する地域研究の役割の重要性や、アジア規模での防災コミュニティを形成するうえでの課題について考えます。