第74回 知の拠点セミナー
第74回 知の拠点セミナー
講演1 「シリア内戦から見える世界」 / 講演2 「高輝度生物発光タンパク質が拓く次世代バイオイメージングと未来社会」
日時 | 平成30年5月18日(金) 18時00分~20時00分(※17時30分から受付開始) |
---|---|
場所 | 京都大学東京オフィス (東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸の内ビルディング10階:アクセスマップ) |
プログラム |
- 第74回セミナー 申込ページ (5月16日(水) 16時まで)
- お問い合わせ:jurc-seminar[at]eri.u-tokyo.ac.jp まで
講演1:「シリア内戦から見える世界」
黒木 英充(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 教授)
シリア内戦が8年目を迎えました。子どもの学校の壁の落書きから始まった混乱は、およそ40万人が命を落とし、その何倍もの人を負傷させ、一千万人をこえる人々が家を失って国内外で避難民・難民となるという、未曽有の事態を引き起こしています。米ロやサウジアラビア、トルコ、カタル、イラン、イスラエルなど諸外国が介入し、戦争の様相は目まぐるしく変化してきました。「イスラム国」を軍事的に消滅させるために互いに衝突を避けていた勢力も、いまや正面から衝突しかねない状況となり、誰もコントロールできないまま、事態がさらに悪化する恐れがあります。なぜこのようなことになったのでしょうか。
シリア内戦を性格づけている多層構造を理解したうえで、このような暴力を操作できない国際社会の問題について考えてみましょう。二つの超大国が世界の暴力を管理する構造が崩れて多極化すると同時に、宗教や民族の衣をかぶった排外主義が吹き荒れ、分極化が世界各地で進んでいます。シリアではこれが最も激しく、劇的に発生したのだといえます。人類史上、最も早くから都市文明を発達させてきた地域で、この問題が先端的におこっているのです。この戦争が地域的にさらに拡大していくと、エネルギー問題を通じて世界的危機に直結することになります。その意味でシリア内戦は他人事ではありません。今後の世界を見通すためにも、まず問題の正確な把握から始めたいと思います。
講演2:「高輝度生物発光タンパク質が拓く次世代バイオイメージングと未来社会」
永井 健治(大阪大学産業科学研究所 教授)
蛍光タンパク質や生物発光タンパク質を利用したバイオイメージング技術により、生きた試料における遺伝子発現やタンパク質動態、細胞の形態変化など、様々な解析が可能になりました。また、フェルスター共鳴エネルギー移動を原理とするバイオセンサーをデザインすることによって、酵素の活性化や細胞内イオン濃度の変化といった細胞機能を可視化することも可能です。このような技術を我々の生活に応用しない手はありません。
本セミナーでは、私たちの研究室で開発された蛍光タンパク質や生物発光タンパク質、或いはそれらのハイブリッドタンパク質であるナノランタンを利用したバイオイメージングについて、最新の知見を交え解説するとともに、多彩なナノランタンを植物に実装することで実現する「電力を必要としない発光デバイス」の可能性を紹介し、30年後の未来社会に誘(いざな)います。